FANZAやAPEXは、広告素材画像の拡大と縮小しか認めていません。画像の一部だけを使いたくてもトリミングは禁じられているのです。なぜなのか、その理由を解説してみます。
アフィリエイト広告素材の使用ルール@APEXとFANZA
APEXとFANZAのアフィリエイトでは、広告素材の使用ルールがほぼ同じです。ただ、 AVメーカーが提供している動画作品紹介文の扱いは異なり、APEXでは広告に使えますがFANZAでは引用が禁止されています。
作品紹介文を宣伝素材として使えないFANZAですが、APEXの宣伝リンクを併置すれば実際上は使えるでしょう。AVメーカーから提供されている作品紹介の文面は同じだからです。APEXの作品紹介文を貼った横に、DUGAとFANZAのボタンが並ぶだけですね。
画像の使用ルールに関しては、APEX、FANZAともに、画像アスペクト比を維持したままでのリサイズだけを許可しています。画像をトリミングしたり、何かを追加で描画したりすることはできません。
どうしてこんな面倒なルールを決めているのかというと、著作物の権利関係が入り組んでいたりするからです。
そもそも著作権とは何か
写真やイラスト、文章などに著作権があることは一般常識ですが、ビジネスで著作物を使うには相当な注意が必要です。著作権者には怖い人たちもいるので、うっかりすると著作権使用料を請求する裁判を起こされ、数十万円を支払わざるを得なくなる、などということが実際に起きています(補足※1)。
ですから、お小遣い稼ぎ目的で開設した趣味のブログだったとしても、著作物を利用するならきちんと著作権について理解しておきたいものです。
簡単に言うと、著作権とは、人が思想や感情を表現するために創造した有形無形の作品に価値を認め、その作品を保護する制度です。著作権は作品が創造されたときに自然発生するため著作権の届け出などは必要ありません。
たとえば、今あなたが読んでいるこの文章には、筆者が文章を紡ぎ出した瞬間に著作権が自然発生しているわけです。同じように、AV動画を宣伝するために提供されている広告素材にも著作権が発生しています。
著作権は財産権と人格権で構成されます。広告素材の画像は、宣伝目的で使用したいという契約で著作権者から使用権を譲り受けることができます。これが著作権の財産権です。財産権の方は理解しやすい概念です。普通の商品と同じように、契約で貸し借り売り買いができる財産としての性質を認めるということです。
一方、著作権には著作者人格権というものもあります。著作者人格権は著作物に対する思い入れを侵害されない権利のことです。著作者人格権は、日本では著作者本人だけが行使できる権利とされ、譲渡できません。
著作者人格権が問題になるのは、著作物の形態が変わるような場合です。もともとのイラストに何かを描き加える、イラストを変形させる、文章の並びを変える、文章を削るなどにより、作品で表現した意図が変わってしまうというような場合です。そんなときに、著作者人格権が侵害された可能性が出てきます。
事例としては、イラストより小説の方が分かりやすいでしょう。たとえば、川端康成が編集者に原稿を渡したとしましょう。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」→(ちょっと長いですね、ここは削りましょう)→「何すんだアホ(怒)」となりますね。このように、作者が「不本意である」と感じることをするのが、著作者人格権の侵害です。
画像のトリミングがダメなのは著作者人格権を侵害するから
画像の拡大縮小は許されているのにトリミングが禁じられているのは、財産権と人格権の違いにあります。
画像をアスペクト比を保ったまま拡大縮小するだけなら原画の性質は変わりません。ただ単に元の画像が大きくなったり小さくなったりしただけで、表現されているものは変わっていないからです。
ところが、アスペクト比を変えて縦長にしたり台形にしたり丸くするなど、画像を変形すると原画の印象が変わってしまう可能性があります。さらにトリミングをして一部を切り取ると、原画の印象が変わるだけでなく、著作者が表現したかった内容自体が失われてしまうかもしれません。ということは、トリミングは人格権を侵す可能性が高い行為といえます。
画像の変更が著作者人格権を侵害しない程度なら、契約によって著作財産権を行使できるようにすれば著作権法上の問題はありません。著作者人格権を侵害する可能性が高い場合は、著作者人格権の不行使を含めた契約を締結することで一応、問題はなくなります。
しかし、日本では著作者人格権の行使は著作者本人しかできないという原則がありますから、激怒した著作権者に訴訟を起こされたらどうなるかは分かりません。
ASPも後ずさる著作権法の厳しさ
ところで、FANZA、APEXなどのASPが提供しているアフィリエイト広告素材の著作権契約はどうなっているのでしょうか。
画像のトリミングは禁じているので、著作者人格権の不行使は使用契約に入っていないかもしれません。動画の販売が終了したら広告素材を撤去するようにとうたっているので、著作権の譲渡契約ではなく、期限を定めた使用契約になっているはずです。肖像権がらみもあるので断定はできません。
ASPは著作権者と著作物の使用契約を結び、アフィリエイターに広告素材を使って宣伝してもらう。ただし、何をするか信用できないので、人格権の不行使を求めることはしなかった。あるいは、一応交渉はしたが、著作権者から「あいつらを信じろと?またまたご冗談を、フォッフォッフォ」と言われた。そんなところでしょうか。
捜索に入られるとパソコンや書類を押収され仕事にならない
ASPとしては、おまいらが何かやらかしたとき、警察が捜索で踏み込んでくるのが一番迷惑で怖い。著作権がらみの摘発をテレビニュースで見たことがあると思いますが、段ボールをたくさん持ってきて、パソコンや書類をごっそり押収していきます。当然、仕事になりません。ひどい迷惑。
日本のガラパゴス著作権法。DTIの画像はトリミング改変OK
ところで、日本以外の諸外国では、著作権を譲渡すると著作者人格権も移転するので、画像のトリミングはOKの場合もあります。DTIは広告素材を加工するなとは言っていません。
おまいらが悪さをするたびに厳罰化され、ついに非親告罪化
著作権は民事の性格が強いので国家権力が積極的に介入することはありませんでした。あくまで著作権者の訴えを待って捜索に入るのが普通です。つまり、著作権法違反は親告罪です。
ところが、雑誌の漫画をコピーしてネットにさらすわ、映画を編集してネットで公開するわ、新聞テレビ雑誌のニュースを勝手に転載するわ、著作権法ガン無視のやからが複数出てきたので、非親告罪化に向けて法整備が進んでいます。
暗躍する著作権賠償請求ビジネス業者
顔にウンコを塗られない権利は著作権とは別。フリー素材も危険
グレーゾーンではなく、訴えられていないだけ
アダルトアフィリエイトを解説しているサイトでは、画像使用に関して「法的にはグレーゾーン」だという説明をしていることがあります。でも、著作権侵害が親告罪なので訴えられていないだけで、これはどうかな?と思ったらほぼ黒です。
また、近年は先進国を中心に、著作権を含む知的財産の侵害行為に対して、保護をしようとする機運が高まり、TPP加盟国間の知的財産権の保護規定などで、著作物の非親告罪化が進められています。
なめていると明日は豚箱、罰金500万円+民事損害賠償○千万円
トリミングより画像キャプチャーの方が安全(合法だから)
著作権法により、評論のために著作物を引用することが認められています。著作物のトリミングは著作者人格権の侵害になりかねない危険な行為ですが、著作物の引用は合法なのです。したがって、レビューをするときに作品の画像が必要なときは、堂々と画像をキャプチャーしましょう。ただし、必要性が薄いのに画像を使うのは、引用ではなく転載になります。転載は違法です。
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